世に芸術家と呼ばれる人は多いですが、後世にまで名前の残る芸術家と言うのは、所謂「天才」ですね。
でもどんな天才でも、やはり人間であるという事には変わりないので、嫉妬や見栄もまた彼らは持っているのです。

半世紀以上前に、舞踊家としてアメリカ全土に知られた女性がいました。
彼女の舞踊団は世界公演も多くあり、彼女自身天才と呼ばれる一人であったので、それこそ一世を風靡したのですが。
でもやはり人間ですので、老いからは逃れられませんでした。

彼女が作った学校で、ある日普通のクラスを彼女が見に来たことがありました。
その時にはすでに、介助が必要なくらい脚も弱って、手はリューマチで曲がってしまっていたのです。
クラスが順調に終わり、生徒たちは彼女と握手して、送り出しのためにセンターを開けるように並びました。
その通路になったところを、花道のように歩いて退出した彼女でしたが。

生徒達の拍手の中、彼女のダンサーとしての誇りが弱った身体に活を入れたのか、舞台芸術家としての力が蘇ったのか。
彼女は介添えの手を振り払い、顔を上げて弱弱しいけれどしっかりとした足取りでスタジオを退出して行ったのです。

老いて、とっくに舞台を引退した老芸術家の、拍手に蘇らされたプライドをそこに感じずにはいられなかった、という事です。
その弱弱しい足取りは誇り高い表情と共に、立派なパフォーマンスとして生徒達の記憶に残ったのでした。

Graceful beautiful woman ballet dancer full length studio shot  gray background
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